屍の青春

どこからか聞こえる子どもの悲鳴で目が覚めた。それは決して恐怖からやってきたものではないだろうし、一概に「悲鳴」と片付けてしまうのは語弊があるかもしれないが、とにかく、脳天を突き破るような幼い声だった。横に目をやると、どうやらスマートフォン…

呵呵

蠟がぽたぽたと濡れそぼる。それは、夕立が雨粒を落としていくのと同じくらいの速さで、考え事なんてしようものなら、あっという間にそこらじゅうが蠟まみれだ。人々はそれを嫌がり、蠟燭立てをこしらえたり、地面に落ちて固まった蠟をへらで削り取ったりす…

宿世

目を閉じ、息を止め、全部が嘘であってくれと本気で願った。水中は異様なほど静まり返っていた。給湯器が忙しく働く音と、自分の心臓の音だけが生々しく響く。この行為がどれほど馬鹿馬鹿しいかなんて、自分が一番よくわかっていた。その証拠に、次の瞬間に…

故障

異常な暑さで故障してしまったのだろうか。自分の思いを言葉にすることが著しく苦手になってしまった。脳みそからは絶えず言葉が湧き出てくるというのに、それを一連のまとまった流れにするという作業ができない。実際に、ここまでのたった数行を文字にする…

花摘みⅡ

以下の文章は、全て過去の下書きやメモ書きからの抜粋です。全く関係の無い事柄について記しているので、脈絡はありません。1つ目と2つ目は二年と少し前、3つ目は二週間ほど前のものです。 謂わば、この作品の主人公は悪である。幼少時代より純潔主義を強い…

花摘み

以下の文章は、全て過去の下書きやメモ書きからの抜粋です。全く関係の無い事柄について記しているので、脈絡はありません。あまりはっきりと覚えていないものが多いですが、最も古いものが一年半前、新しいものが数ヶ月程前のものだと思います。これからは…

薔薇

中之島公園のバラが見頃だとインターネットのサイトか何かで目にしたので、今日は花見に行こうと前々から決めていた。天気は生憎の曇天であった。しかし、一ヶ月ほど前に購入した一眼レフでの写真撮影にすっかり虜になってしまった私は、ただ撮りごたえのあ…

伽藍堂

自分が夜更けに涙を流す理由は焦燥であり、恐怖であり、後悔であり、不満であり、無念であり、嫌悪であり、恥であり、嫉妬であり、罪悪感であり、殺意であり、劣等感であり、恨であり、怨みであり、苦しみであり、悲しみであり、切なさであり、怒りであり、…

追憶

中学時代の旧友に会った。私の記憶が正しければ、彼とはよく諍いをしたものだが、互いに大人になったのだろう。フランチャイズチェーンの喫茶店で軽食を取りながら、他愛ないことをあれこれ話した。 数時間して彼と別れた。私はその足で、近くのショッピング…

煉瓦

大学生になって一か月と少し、異様な違和感が私を取り巻くようになったのは、決してつい最近のことではない。思ってもない言葉を吐き、嫌いなものを好きだと偽っていると、ついに身体の中に伏在していた「自我」が悲鳴を上げた。それから私は、再び自分のこ…

灰色

朝の列車は途轍もなく恐ろしい。車内には一寸の余白もなく、人々はみな涼しい顔をして一言も発さない。若い女性はスマートフォンを頻りに見つめ、俯きながら壁に凭れかかれている。一方、ビジネスマン風の男性は、車窓を横切っていくメトロポリスの欠片を、…

監禁

晴れて四月から大学生になることが決まった私は、バイトも遊ぶ約束もない休日、母に勧められて部屋の大掃除をすることにした。掃除は嫌いだ。どれだけ断捨離をしようが、次から次へとものが溢れ出てくる。尤も、大掃除をしなければならないほどすぐに部屋を…

過程

ㅤ忘れてしまいたい過去のない人間がこの世にあるものだろうか。今までたった20年にも満たない間を生きてきたが、それでも私には忘れてしまいたいことがたくさんある。つい、私がこんなに陰鬱なのも、こんなに人と話すのが苦手なのも、全部過去のせいにしま…

不眠

ㅤ最近、めっきり眠れなくなってしまった。学校に通っていた頃は、夜半にはもう眠気でどうにかなっていたというのに。生活習慣が乱れきっている。まったく、夏休み前、学校から渡された「模範的な夏休み生活」のプリントに描かれていた「模範」とは似ても似…

屁理屈

ㅤ夏の気怠い暑さと、紙が彼方此方に散らばった四畳半は、私を憂鬱な気分にさせるにはもってこいのロケーションである。「受験生」として過ごす夏は二回目だが(一回目は高校入試を控えた中学三年生の頃)、何を隠そう、私は人生で一度も勉強に関して努力し…